さぁ、みなさんご一緒に~!

Tという元生徒2007年11月18日 13時53分


Tと初めて会ったのは、彼が幼稚園の年中組に
なるときだった。小さくて、頭ばかりが異常なほど
大きく見え、アンバランスだな…というのが第一印象。

Tは恥ずかしがり屋で口数が少なく、あいさつも返事も
なかなか上手くはできなかった。でも努力家で、ピアノの
練習も宿題も地道にこなしてきた。何より、とても繊細な
演奏をし、私の好きなタイプの生徒の一人だった。


彼にはKという兄がいた。Kもまた、私の生徒だった。
ふたりは全く違う性格で、仲はあまりよくなかった。
Kは高校受験前までレッスンに来ていたが、彼自身と
しては納得のいく進学ではなかったらしいことを、後に
なって母親から聞いた。

Tが中学生になる直前、母親と二人でレッスンをやめる
あいさつに来た。彼は母親に促されて「ありがとう」とだけ、
やっと言った。母親によれば、兄のKを見ていて、中学では
勉強が大変そうなので、それでピアノをやめると言い出した
ということだった。ピアノが嫌いなわけではないし、私との
相性も悪くはなかったのでとても残念だったが、引き止める
ことはしなかった。
私に丁寧なおじぎをくり返す母親をせかすようにして、彼は
帰ろうと玄関を出た。それなのに、私をふり返りふり返り、
バイバイと手を振り、泣き出しそうな顔で行ってしまった。


「本当に大変かどうか、少し続けてみようよ」と、引き止めて
みればよかったかな…とTを思い出すたびに考えた。

                              つづく

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